データ駆動法による脆性破壊曲面形状シミュレーション

脆性破壊曲面形状シミュレーションは,ゲームや映画の重要な課題として扱われている.脆性破壊に関する既存手法の中では,計算速度重視の手法と,リアリティ重視の手法がある.しかし,計算コストが高い物理ベースの手法の実現は長年解決できない問題であった.その中で,境界要素法 (BEM) を導入し,既存手法と比べて高速,物理ベースかつ詳細な破壊形状を生成する手法が提案された.しかし,この手法では破壊面の頂点数が増えると同時に,各計算ステップにおける BEM の線形システムの計算時間が急激に増える問題がある.

本研究では,BEM による脆性破壊シミュレーションの計算時間を軽減するため,BEM の線形システムを Regression Forest によるデータ駆動法に置き換えた手法を提案する.すなわち,最初のステップで BEM 線形システムを計算した後,次のステップからは,破壊の進行の時に必要とする破壊面の変位情報を,圧力係数を用いて予測することとする.データベースについては,Cube のモデルの破壊シミュレーションから,破壊の方向と大きさからの影響を受けないように設計された,圧力係数,材質強度及び変位情報から構成される特徴ベクトルを抽出し,Regression Forest により学習させる.このデータベースを用いて,各モデルにテストする時の再現性及び汎用性について検証した.その結果,シミュレーション時間が短縮されるとともに,BEM シミュレーションの結果と似たような形状と破壊面を有する予測結果を得ることができた.

論文

  • Yuhang Huang, Yonghang Yu, Takashi Kanai: “Predicting Brittle Fracture Surface Shape From a Versatile Database”, Computer Animation and Virtual Worlds, e1865, 2018.
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  • Yonghang Yu, Yuhang Huang, and Takashi Kanai: “Data-Driven Approach for Simulating Brittle Fracture Surfaces”, ACM SIGGRAPH ASIA 2017 Workshop: Data-Driven Animation Techniques (D2AT), No.3, 8 pages, Bangkok, Thailand, 2017.
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  • 黄 宇航,于 永航,金井 崇: “データ駆動法による脆性破壊曲面生成シミュレーション”, 画像電子学会 ビジュアルコンピューティングワークショップ 2017, 登別, 12月, 2017.